頭頚部

第4章 症例
4-1-1.頭頚部

(a) 左斜め後屈時(図4-1)に限って頚と肩甲間部にひどい痛みを伴った36才女性の症例。この場合、右前頚部の伸展が阻害されていると判断し、右大腸経を治療対象とする。合谷、手三里、曲池などが選択される経穴である。効果が十分でなければ、巨骨や扶突なども刺激をする。後屈制限があれば、同名経である胃経の伸展も制限されていると判断し、足三里や腹部の経穴を追加するといい。

図4-1 4-1-1-(a)の制限動作
図4-1 4-1-1-(a)の制限動作
使用経絡経穴
右大腸経合谷、手三里、曲池

(b) 歯痛、鼻閉、咳などの症状が頚の動きの制限と関連する事がよく観察される。脾臓摘出手術後、原因のわからない頑固な鼻閉と咳の発作が続いた48才の女性。頚部の後屈時(図4-2)に制限感および鼻閉の増悪ならびに咳の誘発があった。腹部の手術痕周囲の任脈、胃経、脾経に刺激をすると、頚部の動きの改善と共に鼻閉の改善ならびに咳誘発の消失をみとめ、3回の治療でほぼ改善した。再発したときには、皮内針を行った部位に湿布を貼ったり、温灸などで暖める様に指導した。

図4-2 4-1-1-(b)の制限動作
図4-2 4-1-1-(b)の制限動作
使用経絡経穴
手術痕周囲任脈建里
胃経天枢
脾経大横