第３章　M-Test（経絡テスト）に基づいた治療の実際

３-２．腰部・股・膝・足首に対する治療

３-２-１．下肢後面・躯幹背面の動きに制限のある症例

仰臥位で図のように足首を背屈し、症状が出れば、足関節周囲の膀胱経か腎経を刺激する。選択する経穴は膀胱経では、崑崙、申脈、金門、腎経では太谿、大鐘、照海である。効果が不十分なとき下腿後面の承山や築賓などを用いる。これらの治療でこの動作の制限は改善する。次にそのまま、片方の下肢を挙上する。この負荷での制限感や痛みを観察した後、膝を軽く屈曲し、股関節を屈曲する。これらの動作での痛みの有無に応じて、図に示したような治療部位を選択する。経穴選択の原則はそれぞれの負荷でどこが最も伸展負荷を受けるかを判断することにある。膝窩の経穴を選択する場合には、膀胱経の委中、合陽や腎経の陰谷を用いる。大腿後面を治療対象とする場合は膀胱経の殷門や承扶を用いる。殿部における経穴を選択する場合には秩辺、白環兪などが刺激の対象となる。

この様にして、下肢の負荷に伴う症状を改善した後、立位ないし椅子での坐位で前屈を負荷する。痛みなどが誘発ないし増悪されれば、腰背部の膀胱経や督脈の伸展が制限されていると判断し、腎兪、大腸兪、命門、腰陽関などに刺激をする。急性腰痛の発症時に上肢にも負荷のかかる動作がなされている時には、膀胱経の同名経である上肢の太陽小腸経の後谿や腕骨などを取穴する。