上肢橈側・頭頚部前面・前胸部の動きに制限のある症例

第3章 M-Test(経絡テスト)に基づいた治療の実際
3-1.頚・肩・肘・手首に対する治療
3-1-2.上肢橈側・頭頚部前面・前胸部の動きに制限のある症例

最初に手関節を尺骨側へ屈曲し、手関節の母指側を伸展する。これで、この部分に分布する大腸経・肺経に伸展負荷がかかる。痛みや不快感が誘発されるようであれば、大腸経の合谷、陽谿、肺経の魚際、太淵、列缺などを刺激する。肺経と大腸経のいずれの動きの制限が強いかを判断するには負荷を工夫するか圧痛で確かめるなどする。効果が不十分であれば、手三里や孔最を刺激する。これらの刺激でこの動作の制限は改善する。次に、上肢を伸ばしたまま肩を伸展する。これで、制限感や痛みが出現する場合には、図に示したように肘を屈曲して肩を内旋する負荷を行う。肘を曲げた場合に症状が発現しないときには、治療対象は肘周辺および前腕となり、曲池、尺澤などを用いる。一方、症状が増悪したり誘発されるときには、肘から肩にかけての大腸経と肺経を刺激対象とする。大腸経の手五里、肺経の天府などを加える。大腸経と肺経のいずれの影響が強いかを判断するには肩の動きに内旋、外旋の要素を追加すればいい。内旋でより強い症状が出る場合には大腸経に刺激し、外旋でより悪化する場合には肺経に刺激を加える。

次に、頚部に対して斜め後屈負荷を行う。痛みなどが誘発ないし増悪されれば、前胸部から頚部にかけての経穴、巨骨、扶突、中府などを用いる。下肢の経絡である胃経や躯幹の経絡である任脈を治療対象とするかどうかは、頚部後屈負荷で決める。この負荷で痛みなどが誘発ないし増悪されれば、胃経の足三里、天枢、任脈の巨闕、壇中などを用いる。

図3-2 上肢橈側・頭頚部前面・前胸部の動きに制限のある症例
図3-2 上肢橈側・頭頚部前面・前胸部の動きに制限のある症例