第1章 経絡と動き
1-2.経絡の動きの制限と病気
1-2-6.経絡の動きの制限を確認する方法論
痛みなどの愁訴は体の各部分の滑らかな動きが制限されるために出現すると我々は仮定している。この滑らかな動きの制限は経絡の動きの制限と置き換えることが出来ることはこれまで論じてきた。
動きの制限に関わる経絡を知るには、動きに際して伸ばされるべき経絡や縮むべき経絡などの判断が必要となるが、経絡分布の概略を知っていれば、比較的容易である。
しかし、治療を組み立てるときには、数ある経絡の中からどの経絡を選択すべきかという判断が必要となる。先に述べたように、姿勢の変化などは滑らかな動きの出来ない部位を動かさない様に保つための動作だと理解できる。姿勢を観察するなどの視診でどの経絡の動きが制限されているかを判断する情報を得ることが出来る。
また、どの様な姿勢を取ることが耐え難いかあるいは楽であるかを問診することで、どの経絡の動きの制限であるかの情報も得られる。しかし、視診や問診の情報による判断には限りがある。なぜなら、人の病態には様々な要因が互いに複雑にからんでいる場合があり、的確に情報を整理し判断するには多くの経験を必要とする。
そのため、どの経絡の動きの制限かを簡易に判断できる方法論が必要となる。これまでの多くの治療経験を通じて、痛みないし不快感を誘発したり増悪したりする動きの分析から経絡の動きの制限を確認する負荷テストを考案した(図1-18)。

この方法に基づけば、治療すべき経絡を容易に、迅速に、的確に判断できる。しかも、治療毎にテストを行えば、変化した病態を把握できるとともに治療効果判定の指標としても使える特徴を有している。第2章で、この負荷テストの詳細について述べる。