第1章 経絡と動き
1-1.経絡分布の特徴と人の動き
1-1-2.上下肢にみる経絡分布の特徴
(a) 2種類の経絡が分布する手指(第5指)
手の指には左右6種類づつの経絡が分布している。手のそれぞれの指に経絡が分布しているが、手の指は5本であるので、2種類の経絡が分布する指がある事になる。これに相当するのは手の第5指である。手の第5指は剣道の竹刀をふるとき、野球のバットを振るとき、テニスをするとき、ゴルフのスイングをするとき、相撲で脇をしめておすとき、弓をひくときなどの動作において上半身の動きをスムーズに的確に行うために最も重要な役割を果たしている。
(b) 2種類の経絡が分布する足趾(第1趾)
下半身の動きに重要な役割を担うのは足の第1趾であるが、手の第5指と同様に2種類の経絡分布がある。手の第5指に陽経、陰経がそれぞれに分布するのと異なり、足の第1趾には2種類の陰経が分布するという特徴がある。この陰陽分布の特徴は上半身を陽、下半身を陰とする概念との関連があるものと推測される。スポーツ動作においては上半身と下半身の動きとの調和ある連携が必要とされ、このことによって身体全体の動きがスム−ズになる。この上半身および下半身の動きに重要な役割を果たす指趾に経絡が2種類も分布している。これは単なる符合ではなく、古人は経絡と身体の動きとの密接な関連を意識していたに違いない。