第1章 経絡と動き
1-1.経絡分布の特徴と人の動き
1-1-1.経絡概念の基本構成
(a) 正経と奇経

経絡には正経とよばれる12種類と奇経とよばれる8種類がある。奇経は正経のバイパスと考えられているが、中でも固有の経穴が配されている2つの奇経(任脈、督脈)と正経とを合わせた14経絡が重要視されている。
(b) 陰と陽
経絡は陰と陽に大別され、太陽の下で地上に四つん這いになった時に陽(ひ)のあたる部分を陽(よう)、陰(かげ)になる部分を陰(いん)と分類する。14 経絡のうち7経絡が陽に分類され、7経絡が陰に分類されている。陽経は背側の中心線の経絡の他に上肢から頭頚部にかけて分布する3経絡および頭頚部から下肢にかけて分布する3経絡からなる。一方、陰経は腹側の中心線の経絡の他に胸部から上肢にかけて分布する3経絡と下肢から胸腹部にかけて分布する3経絡からなり、14におよぶ縦のルートが身体の隅々まで分布する形をとっている。
(c) 経絡の名称
経絡は肺経、大腸経などのように主として臓腑と関連づけて名称がつけられている。臓に相当するものとして肺、心、心包、肝、腎、脾があげられ、これらの名称が冠されている経絡を陰経と呼び、腑にあたる大腸、小腸、三焦、胆、膀胱、胃を冠した経絡は陽経に分類する。さらに、陰経や陽経を統括すると位置づけられている経絡をそれぞれ任脈、督脈と呼んでいる。
(d) 同名経
躯幹の中心線に分布する任脈や督脈の2経絡とは別に上下肢に12種類もの経絡が分布するが、これを6つのカテゴリーに分類している。上肢の経絡と下肢の経絡の分布する位置が類似するものを同じカテゴリーとし、陽に属する経絡(陽経)に陽明(第2指、第2趾)、少陽(第4指、第4趾)、太陽(第5指、第5 趾)の文字を冠し、同名経と位置づけている。陰に属する経絡(陰経)にも太陰、厥陰、少陰といった分類を用い、上下肢で位置関係の類似する経絡を同名経と呼称している。
陰経および陽経にはそれぞれペアになる経絡(表裏経)が決められていて、互いに補い合う関係があり、表裏一体と呼ばれるような密接な関係があるとされている。
経絡を陰と陽、同名経、表裏経などの要素に基づいて経絡の分布様式を観察すると、経絡には身体の動きと密接な関連を持つ特徴があることが浮かび上がってくる。